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芸事に親しむのも良いかと、吉祥寺の月窓寺で開かれた薪能をみてきた。
武蔵野商工会議所の主催で、今年がちょうど二〇周年。
シテ関根祥六、ツレ関根祥人、子方関根祥丸の三代共演による「楠露」に始まり、
狂言の「二人袴」、仕舞、
観世芳伸が住吉明神を務める「高砂」まで、全部で2時間半の演目である。
吉祥寺・月窓寺の薪能

と、まぁ知ったような口ぶりだが、能とは縁の遠い生活。
前日から寝不足だし、ウトウトしたらどうしようと思っていたのだが、
無用の心配だった。
入れ替わり立ち替わり、さまざまなパートが現れる。
オペラであり、コーラスであるし、
パントマイムであり、タップダンス。
ヒップホップ(Yo! Yo! ahhと、Yo~ Yo~ Ha!の違い位で)
に乗ったダンスであり、ファッションショーでもある。
能が、こんなに盛りだくさんのものだとは。
「現在とかけ離れたゆったりという時間」という気はせず、まるで飽きなかった。

特に最後がいい。
亀井広忠の太鼓と掛け声が次第にテンポを増し、
舞いは空間をいっぱいに使い、足を踏みならして、それに呼応する。
さきほどまで鳴っていた笛やセリフは、いつしか姿を消して、
舞台は、集中へと向かっている。
これは視覚的な刺激なのだろうか、聴覚的な刺激なのだろうか。
激しいようで、凛と静まり返っているようにも思える。
時間の長さも不明瞭になる、ダンスの原初的な陶酔。
それが最高潮に達したところで、ふっと消える。
現実と虚構のあいだに、自分が置いてきぼりにされたような、
それでいて、虚構が現実のほうに染み渡るような感じ。
村上春樹の小説の読後感を思い出した。
この感覚はクセになりそうだ。
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