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2007.02.16
『東京建築ガイドマップ』刊行
エクスナレッジの編集者・長島さんにお尻を叩かれながら、
完成に至った『東京建築ガイドマップ』
が刷り上がった。
今まではPDFやFAXでやり取りしていただけなので、
実際にどんな質感なのか、サイズはどんな印象なのか、
確認するのははじめてだ。ドキドキ・・・・。

完成に至った『東京建築ガイドマップ』
今まではPDFやFAXでやり取りしていただけなので、
実際にどんな質感なのか、サイズはどんな印象なのか、
確認するのははじめてだ。ドキドキ・・・・。

手に取って印象的だったことは、大きく2つ。
1つ ― 予想以上にポップである。
表紙は青字の部分が浮き彫り(というのかな?)になっていた。
ゴムが張り付いたような感じ。
東京の中心部を16のエリアに分けて紹介しているのだが、
エリアごとに違ったシンボル・カラーが使われていて、軽快だ。
とはいえ、マットな色彩で、「新しさ」を勘違いはしていないのは、
デザインを担当したblack★bathのセンスだろう。ありがたい。

2つ ― 予想以上に軽かった。
純粋に重量の話である。
とりあえず、今日は5冊持って帰ったのだが、肩に負担がかからない。
同じ内容なら、持って歩くのに、軽いほうがいい。
以上2点は、編集者・デザイナーのサイドの功績だ。
では、肝心の内容はどうなのか?
「はじめに」で、本書の特色を倉方がアピールしているので、それを転載して、紹介に代えたい。
あとは皆さまに書店で手に取って判断していただければ幸い。
2月20日頃に店頭に並ぶようだ。
「はじめに 文=倉方俊輔」(『東京建築ガイドマップ』より転載)
「徹底した観賞」のためのガイドである本書は、2つの大きな特徴を持つ。
一つが、物件の選択である。対象年代の始まりは「近代建築ガイド」の定例通りに明治元(1868)年(東京では幕末で採り上げる物件が無かったので)だが、おしまいを1970年代(1979年まで)とした。一世代(25~30年)が経てば、時代の渦中を離れて、ある程度距離を置いた「観賞」の対象になるのではないかと考えたからである。明治から昭和戦前期の建物についても、近年、市民活動や登録文化財の動きの中で重要性が浮上してきた建築や、地域の歴史を象徴する街中の物件といった、従来あまり採り上げられていなかったものを加えた。ただし、個人住宅は特別な配慮が必要だと判断して、基本的に除外している。こうした方針によって、明治期から1970年代までを網羅した初めてのガイドマップが生まれた。
マップに全878物件をプロットしている。指定・登録された文化財、建築賞受賞作品、DOCOMOMO Japan選定物件などはマークで示したので、見学の参考にしていただければと思う。全体のうち、477物件については100字ほどのINDEX解説を行なった。私たちなりに「見どころ」を感じたものである。対象の中には、意外な選択もあるかもしれない。しかし、実際に訪れていただければ、なぜ採り上げているのか納得していただけるはずだ。
もう1つの特徴は、ガイド解説である。全体を16の地域に分け、各エリアごとに見方、歩き方を述べた。従来は「建築ガイド」と言っても実際には物件ごとのデータベースであるものが多い。本書はそうではなくて、歩く目線からのガイドを加えることにした。
建築を1つ1つ訪れていくと、総合的に浮かび上がるものがある。単体の建物から、都市の流れが見えてくる。そして、そこから再び、一つの建築の持つ配慮や意味が感じられる。そんな実際の経験に寄り添うには、個別の建物解説だけでも、俯瞰的な地域解説だけでも、不十分だと感じたからだ。書かれていない1980年代から現在までの建築や都市開発の位置づけも見えてくるに違いない。
斉藤と倉方の2人で物件の選択を行ない、解説を分担した。作業は恣意的な性格を免れない。公平であろうとはしたが、主観は恐れなかった。本書は読者が自らの体験を広げるためのガイドである。記述に共感したり反発したりといったことは、むしろその手助けになると考えた。
「徹底した観賞」とは何か。それは批判できない権威や、権威を前提にしたただの批判を無いものにするだろう。単なる古いもの好きでも、新しものがりだけでもない。実際のデザインや保存などの活動につながるものではある。しかし、本質的には、何かの役に立てようとすると見えなくなってしまうもの。その当たり前に気づかせてくれるような、弱くて強い行為といえそうだ。
目の前に広がる建築の風景は、私たちがつくったものである。私たちには「観賞」の責任と権利がある。両者を誰よりも負っている所有者、そして利用者の方々への感謝を形に現すことのできる、品の良い観賞者でありたい。あらかじめ公道以外の場所への立ち入りが許されているものについては、商品を買ったり、施設を利用したり、活動に協力したりといった機会を持てれば幸いである。
これまで建築になじみが薄かった方々に建築への関心を、近代建築の愛好家に戦後建築への愛着を、現代建築通に少し古い建物への興味を、学生に現在と異なる自らの試みが歴史から孤立していないのだという自信を、そしてこんなジャンル分けに当てはまらないすべての人に豊かな「観賞」を。本書が少しでも提供できたら、これに勝る喜びは無い。
1つ ― 予想以上にポップである。
表紙は青字の部分が浮き彫り(というのかな?)になっていた。
ゴムが張り付いたような感じ。
東京の中心部を16のエリアに分けて紹介しているのだが、
エリアごとに違ったシンボル・カラーが使われていて、軽快だ。
とはいえ、マットな色彩で、「新しさ」を勘違いはしていないのは、
デザインを担当したblack★bathのセンスだろう。ありがたい。

2つ ― 予想以上に軽かった。
純粋に重量の話である。
とりあえず、今日は5冊持って帰ったのだが、肩に負担がかからない。
同じ内容なら、持って歩くのに、軽いほうがいい。
以上2点は、編集者・デザイナーのサイドの功績だ。
では、肝心の内容はどうなのか?
「はじめに」で、本書の特色を倉方がアピールしているので、それを転載して、紹介に代えたい。
あとは皆さまに書店で手に取って判断していただければ幸い。
2月20日頃に店頭に並ぶようだ。
「はじめに 文=倉方俊輔」(『東京建築ガイドマップ』より転載)
「徹底した観賞」のためのガイドである本書は、2つの大きな特徴を持つ。
一つが、物件の選択である。対象年代の始まりは「近代建築ガイド」の定例通りに明治元(1868)年(東京では幕末で採り上げる物件が無かったので)だが、おしまいを1970年代(1979年まで)とした。一世代(25~30年)が経てば、時代の渦中を離れて、ある程度距離を置いた「観賞」の対象になるのではないかと考えたからである。明治から昭和戦前期の建物についても、近年、市民活動や登録文化財の動きの中で重要性が浮上してきた建築や、地域の歴史を象徴する街中の物件といった、従来あまり採り上げられていなかったものを加えた。ただし、個人住宅は特別な配慮が必要だと判断して、基本的に除外している。こうした方針によって、明治期から1970年代までを網羅した初めてのガイドマップが生まれた。
マップに全878物件をプロットしている。指定・登録された文化財、建築賞受賞作品、DOCOMOMO Japan選定物件などはマークで示したので、見学の参考にしていただければと思う。全体のうち、477物件については100字ほどのINDEX解説を行なった。私たちなりに「見どころ」を感じたものである。対象の中には、意外な選択もあるかもしれない。しかし、実際に訪れていただければ、なぜ採り上げているのか納得していただけるはずだ。
もう1つの特徴は、ガイド解説である。全体を16の地域に分け、各エリアごとに見方、歩き方を述べた。従来は「建築ガイド」と言っても実際には物件ごとのデータベースであるものが多い。本書はそうではなくて、歩く目線からのガイドを加えることにした。
建築を1つ1つ訪れていくと、総合的に浮かび上がるものがある。単体の建物から、都市の流れが見えてくる。そして、そこから再び、一つの建築の持つ配慮や意味が感じられる。そんな実際の経験に寄り添うには、個別の建物解説だけでも、俯瞰的な地域解説だけでも、不十分だと感じたからだ。書かれていない1980年代から現在までの建築や都市開発の位置づけも見えてくるに違いない。
斉藤と倉方の2人で物件の選択を行ない、解説を分担した。作業は恣意的な性格を免れない。公平であろうとはしたが、主観は恐れなかった。本書は読者が自らの体験を広げるためのガイドである。記述に共感したり反発したりといったことは、むしろその手助けになると考えた。
「徹底した観賞」とは何か。それは批判できない権威や、権威を前提にしたただの批判を無いものにするだろう。単なる古いもの好きでも、新しものがりだけでもない。実際のデザインや保存などの活動につながるものではある。しかし、本質的には、何かの役に立てようとすると見えなくなってしまうもの。その当たり前に気づかせてくれるような、弱くて強い行為といえそうだ。
目の前に広がる建築の風景は、私たちがつくったものである。私たちには「観賞」の責任と権利がある。両者を誰よりも負っている所有者、そして利用者の方々への感謝を形に現すことのできる、品の良い観賞者でありたい。あらかじめ公道以外の場所への立ち入りが許されているものについては、商品を買ったり、施設を利用したり、活動に協力したりといった機会を持てれば幸いである。
これまで建築になじみが薄かった方々に建築への関心を、近代建築の愛好家に戦後建築への愛着を、現代建築通に少し古い建物への興味を、学生に現在と異なる自らの試みが歴史から孤立していないのだという自信を、そしてこんなジャンル分けに当てはまらないすべての人に豊かな「観賞」を。本書が少しでも提供できたら、これに勝る喜びは無い。
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