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川棚温泉交流センター02

ゴールデンウィークが始まった。
もし時間に余裕がある方がいたら、特に九州北部や中国地方西部の建築学生・建築関係者は、山口県下関市の「川棚温泉交流センター」(隈研吾建築都市設計事務所、2010)を訪れた方がいい。
特に、そこのあなた! 「また隈事務所かぁ」とか「これ系の形ねー」と雑誌を見て思っている貴方にこそ、おすすめなのである。

なぜ、おすすめなのか?
本来は、事細かにその理由を語るべきだろうが、これに関してはそうしたくない気もする。あまり種明かしをしたくない。ふらっと行って、各自が楽しんで発見してもらいたいと思わせる建築だ。

川棚温泉交流センター01

主要なことを一つだけ書くと、スケールがいい。
建物だけを写した写真だと分かりづらいが、規模はすぐ隣まで迫る2階建ての民家と連続している。同時に、ディテールを見せない形態は遠くの山並みと近しく、近景と遠景がつながる。これは町に寄贈された新たな効果だ。
このようなスケールの的確性は、あらかじめ見極めようと思っていたポイントではある。しかし、その他に、予期していなかった意外性が3つも存在した。これは驚いた。どれも付加的なギミックでなく、この建築の中心思想に関係している。
見逃さないよう、しかし、種明かしにならないように、注意点だけを・・。

1. 外壁の仕上げを注視して、建物全体の形が、最初の印象ほど複雑かどうか良く観察してほしい
2. 館内の床仕上げにまんべんなく目を配り、それがどんな効果を発揮しているか考えてほしい
3. 正面から向かって右手に外部から地下に降りるような階段があるが、これが何のために設けられているか明らかにしてほしい(分からなかったら交流センターの方に尋ねること)

全体的な感慨を記そう。
この建築に触れて思い出したのは(唐突かもしれないが)三仏寺投入堂のことだった。実際に現地に行くと、この堂を時間をかけて構築したというより、役小角が「えいやっ」と一瞬にして投げ入れたという伝説のほうを信じたくなる。それは周囲の風景とあまりに適合しているのと、ものとしての思想が細部まですべて一貫しているからだろう。
この建築も同じだ。構築的というより、一瞬でつくられたように思える。
何がオカルトめいた話をしているかのようだが、ここ川棚は古くは青龍の伝説から、近くは音楽家のコルトーがやってきてあの島が欲しいと言ったという太古の伝説のような事実まである土地なのだから、その川棚温泉交流センター(コルトーセンター)が一瞬にしてできたとしても驚くに足りないだろう・・。
少し中沢新一もどきの冗談が過ぎたようだ。閑話休題。

川棚温泉交流センター03

実際には、この建築が反構築的な「一瞬」の印象を与えるのは、先ほどの投入堂と同様に、周囲との適合と、分業的でない思想の一貫性のためだろう。
後者について言えば、行き渡っているのは、いわゆる意匠や計画の厳密さではない。何がこの建築の支柱であるかという価値観である。それが信じられない位に隅々まで一貫している。それが共有されて、その中で皆が仕事をしている。
この建築がローコストであるのは目に明らかだ。なのにうまくできている。しかし、そのうまくできている、というのは、建築家のデザインを無理に押し通し「作品」を作り上げ、ユーザも施工者も泣いている、というのではない。ローコストの中で、何に重きを置き、つくりとして何が重要になるか。その価値観が共有され、各自が自分の持ち分で創意工夫を発揮している。そう感じられる。
要は、ハッピーな建築なのだ。
もちろん、その裏には価値観を共有させるだけの、設計者の自由かつ熱心なコミュニケーションがあったことは容易に創造できる。でなくては、こんなものは建たない。
建築家とは、そうした共有可能な価値観をセッティングしてあげる職業なのだ。そんな設計者の声が聞こえてきそうだ。

繰り返しになるが、これは今年の見るべき建築だ。
ものそのものが思想であり、建築の「完成度」という概念を書き換え、バラックと土木をつないでいる。
旅をしていて、集落にふらっと入ったら、それが細部から全体までよく組み立てられていて、歴史を経ているのに(だからこそ)一瞬でできたような質を持っていて、足早に発見を楽しみながら、頭はああでもないこうでもないと、ぐるぐる回る。そんな幸せを持っている。
だからあなたも、ここまで旅をすべきだと思う。

川棚温泉交流センター04

[行き方]
川棚温泉交流センター/下関市烏山民俗資料館の開館時間は午前10時~午後8時(入館は午後7時30分まで)、12/31-1/3休館
JR山陰本線「川棚温泉駅」から約2km
 川棚温泉駅までは下関駅から約40分。ただし本数が多くないので、列車の時刻を要確認。
名物は「瓦そば」。車の方は5kmほど離れた県道35号沿いの天然記念物「川棚のクスの森」(樹齢約千年)も一見の価値あり。
隣の隣の駅である「梅ヶ峠」下車約1.3kmには、川棚温泉交流センターと同じ藤原徹平氏が担当した「安養寺木造阿弥陀如来坐像収蔵施設」(隈研吾建築都市設計事務所、2002)があり、こちらもおすすめ。

[関連]
川棚温泉交流センター公式サイト
http://kawatana.com/kawatananomori/

建築系ラジオ 5/16 藤原徹平×西村浩 公開収録のお知らせ
http://kntkyk.blog24.fc2.com/blog-entry-343.html
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