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2010.04.28
東京2010

「新建築」2010年4月号は、新春らしい特集だ。
「特集:東京2010」と題し、110人の建築家・専門家に、それぞれ3つの東京の建築を推薦してもらう。それを地図上にプロットし、これまでの「新建築」の写真とデータとを併せる形で、いわば集合知の東京ガイドマップを、新東京人をはじめとするすべての建築関係者に送り届けている。
マクロに見ても、ミクロに見ても興味深い。
例えば、平田晃久さんが伊東忠太の築地本願寺に優れたコメントを寄せていたことが研究者としては嬉しく、菊地宏さんは渡邊洋治の第3スカイビル(これは中村竜治さんも選んでいた)だけでなく、寡黙に建つ渡邊洋治自邸も挙げていて、鋭いと感じた。
大西麻貴さんと石上純也さんが選んだ3件は、それぞれにやや意外なもの。ただ、コメントは前者が野太く、後者がやわらかで、男女入れ替わったようなところは、いつも通りだったが。
建築史家・鈴木博之さんの推薦文も微笑ましい。肩の力の抜けた文章が、本郷を離れたことを思わせる。
私は以下の3件を挙げた。
○常磐橋(東京府、1877)中央区日本橋本石町2~千代田区大手町2
○聖徳記念絵画館(小林政紹+佐野利器+小林政一、1926)新宿区霞ヶ丘町1-1
○ホテルオークラ本館(大成観光設計委員会/谷口吉郎ほか、1962)港区虎ノ門2-10-4
どれも存在としてはど真ん中なのに、不思議と、これまで建築として語られることは少なかった。
それぞれ、前近代から近代の転換(擬洋風)、近代化(様式建築)、戦後の再出発(モダニズム建築)の中で、近代化(西洋化)の最前線に建ちながら日本を表象し、日本における近代の苦心と困難と可笑しさと可能性を語っているように見える。
その苦心と困難と可笑しさと可能性のショーケースとして「東京」はあり、その意味では、東京は現在が最高地点(ピーク)ではないか。
そんなことを「インタビュー:歴史のショーケースとしての東京」として語った。
「特集:東京2010」では、菊竹清訓さん、林昌二さんや伊藤滋さんら6人が「東京論」を論じてもいる。その末席に置いてもらった。
可笑しいのはこれが、「西日本工業大学」名での最初の記事であること。
肩書きだけ見たら、なんで東京を語っているのかと思う方もいるかもしれない。
いろんな意味で、異動の手土産を持たせていただいたような気分。
東京については、これからも考え続けていくことになるのだろう。

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