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平沼孝啓展

「中之島公会堂のステージに立てるなんて、もう、あるかないか(笑)」なんて話を芦澤竜一さん平沼孝啓さんとしていたら、緊張もだいぶほぐれた。
「水都大阪2009」というイベントが8月22日から10月12日にかけて、大阪の中心部で開催されている。その開催記念として、9月12日に「環境に対する建築家の意識」と題した建築講演会が大阪・中之島の中央公会堂で催された。その進行役を務めることになった。
東京と歴史を出たことのない私が、大阪で環境がらみとは、なんて“アウェイ”なんだろうか。唯一の救いは、芦澤さんも平沼さんも同じ1971年生まれ、というくらいで…。

リバーサイドビルディング

昼に大阪に着いて、国立国際美術館に向かった。なんだかんだで年1回くらい大阪に来ているが、実はこのあたりに来るのは初めて。あれがgrafのビルか、あれがクラブ・リバーサイド(過去の関連記事)か、と水辺の風景を実際に見られて、すでに気分は高揚する。
国立国際美術館の入口で声をかけられて振り向くと、建築家の福屋粧子さんで、なんでここにと話したら、別の用事で昨日から来ていたらしい。偶然にもう一人、同年生まれとの遭遇。

国立国際美術館では、平沼孝啓さんと芦澤竜一さんの2人の建築展が開催されている(9月10日~18日 10:00~17:00、最終日は15:00まで。関連HP)。
ふだん講堂に使われている部屋を会場としているのだが、その規模がとても良かった。
入口から左右二手に分かれている。

平沼孝啓・芦澤竜一建築展.jpg

平沼さんの会場は、でんと置かれた「東京大学くうかん実験棟」の一部原寸模型が、動線を画していた。これは東京大学生産技術研究所腰原研究室との共同研究で、和歌山県の間伐材を利用した新しい木造建築の取り組みだ。木造ブロックを中空状に積層した空間に、光が差し込む。
面白いのは、木の香りが会場全体に立ちこめ、また不均質な木のざらつきもリアルな印象なのだが、できあがった空間の感触は、固体とも気体ともつかない媒体を彷彿とさせるところだ。
これまでの「木材らしさ」よりも「木材らしく無さ」、言い換えると、まだ発見されていない新たな素材感を志向しているようだ。

平沼孝啓さん展示01

「東京大学くうかん実験棟」の他には、数々の国際コンペで入選したアンビルトのプロジェクトが並べられている。思考のスケールが大きい。良い意味で「荒唐無稽」だ。こちらの展覧会には「非現実から現実へ」というタイトルが付いている。
その名の通り、冒頭に並んだものが最も「非現実的」なプロジェクトであり、最後が代々木公園の中に木と鉄のツリーハウスを建てるという現在進行中のプロジェクトなのだが、比較の問題でこれすら、だいぶ「現実的」に思える。
しかし、やたらめたらに「非現実」なのではない。そこに一貫して、素材と場所の性質を発見して新しい空間の感触を目にしたいという思いが横たわっている。それが平沼さんらしさなのだろう。
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