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2009.05.13
世界をつなぎとめる手 ― 遠藤勝勧『スケッチで学ぶ名ディテール 』

建築家には、次第にバラバラになってしまう世界をつなぎとめる機能がある。
遠藤勝勧さんの『スケッチで学ぶ名ディテール』(日経BP社)には、そのための智恵がつまっている。
本から得る所は幅広いが、中心には「図面」がある。分化した世界に全体を与える最大の武器が「図面」だ。
文字を追っていくと、あの語り口が耳元で聞こえてくる。
遠藤さんの言葉には、何というか、それ以上分解できない感じがある。それに対していろいろな見方ができる。建築論でもあるし、仕事術でもあるし、人間論でもある。その感じが、うまく本に閉じ込められている。
いったい何件の図面が、この一冊に載っているのだろう?
実測した世界各地の建築に対する遠藤さんのコメントは、短文なのにそのエッセンスが伝わってきて、すぐに見に行きたくなる。伊東豊雄さん、内藤廣さん、菊竹清訓さんとの対談は、彼らを知る上でも必読。もちろん、タイトル通りに、学ぶべきディテールの図面が惜しみなく盛り込まれている。
しかし、その中でも一番、感心したのが遠藤さんの姿勢だ。当たり前のことを当たり前にやれるブレのない姿勢が、こうして本に収まったことだ。
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