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2009.04.23
星一の名の下に ― レーモンドの「星薬科大学」

アントニン・レーモンドの設計で1924年に完成した「星商業学校(現・星薬科大学)」は、当時なんとも「SF的」な総合校舎だったに違いない。何せ一つの建物の中に収まるのは、階段教室、大講堂、図書館から運動場まで・・・。しかも、そこには一つの階段もない。すべてが一続きの床でつながっている。

魔法の鍵はスロープだ。正面の吹き抜けにスロープが巡る。背面には階段室の代わりに2つのスロープ室があって、見た目のアクセントにもなっている。大講堂も床がゆるやかに傾斜している。


スロープは階の違いや建物内外の境といった常識を取り払う。正面の階段室の視線が、入口の門とつながる。ここにあるのは外に対して隔てるような威厳ではない、機能に基づいた新しい建築の存在感。

当時これだけの施設をつくらせた星一がすごい。使い続けている星薬科大学も偉い。さまざまな機能を内包し、敷地の中心に位置を占める校舎であるだけに、通常は建て替えられやすそうなものなのに。
創設者のレジェンドが宿る小さな大学ならではの、偉業だと思う。
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