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はとバス

日本コンクリート工学協会関東支部若手会21が主催する「東京コンクリート建築ツアー」を昨日(3月26日)実施した。3月13日の記事でも公募し、21名の方にblog経由で参加していただいた。

空は青空。東京駅近くの鍛冶橋駐車場から出発する。伝統と信頼のブランド「はとバス」。バスの中はシンプルで広い。最近のは、ガラスのシャンデリアなどは見られないのだな。

築地本願寺全景

まず「築地本願寺」(伊東忠太、1934)へ。お寺の方にご説明をいただき、パイプオルガンの音色も拝聴する。本堂内部の写真も撮って良いという。そんな開放性は、そもそも1934年に本堂をこうした形式で建てた時から、お寺に埋め込まれている。
さらにさかのぼると、いち早く現在の龍谷大学をつくり、洋風の校舎を建てた明治初期にさかのぼる。近代日本仏教史を軸にとれば、伊東忠太の存在もその中の一幕である。

築地本願寺の象

象がいた。

「片倉ビル」(旧片倉館、清水組、1926・37)、「東京大栄ビル」(旧蛇の目ミシンビル、前川國男、1965)、「京橋三丁目ビル」(村野藤吾、1978)を続けて外部から説明。
見るたびにテナントが減っていた「京橋三丁目ビル」はすでにほぼ、もぬけのから。周囲では再開発が進む。

二重橋前楠公レストランで食事。建物は隈研吾さんのようなルーバー和風だが、まさかね。

東京カテドラル聖マリア大聖堂

食後で眠くなるかと思ったら、「東京カテドラル聖マリア大聖堂」(丹下健三、1964)は、さすがに目が覚める。
ステンレスで覆われた外観は、双曲放物線という数学的法則性が、そのまま地に降り立ったかのよう。内部に入ると一転コンクリートの地肌が現れて、地をうごめく人間の労働を感じさせる。こうした打ち放しの質は、1960年代でないとできない。
外部のヴァーチャルから、ヴァーチャルとリアルとが、まるでルビンの壷のように高速交代する内部へ。そんなコントラストは2007年の改修で、いっそう鮮やかになった。全盛期の丹下健三と、教会というプログラムが幸運にも出会い、ある種の建築体験の極を達成した感がある。

セミナーハウスユニット

そこから「大学セミナーハウス」(吉阪隆正+U研究室、1965-)までは、予定通りの1時間20分。
車中では以前に監修・出演した山形テレビ制作の番組『妖怪を見た男~近代建築の巨人・伊東忠太の世界』のDVDを流す(過去の関連記事)。
ユニットハウスは、だいぶ傷んでいた。次回の「ぐるぐるつくる大学セミナー・ハウス」で考えなくてはいけないだろう。
吉阪隆正さんについて詳しくは、拙著『吉阪隆正とル・コルビュジエ』をご覧ください。

多摩美術大学図書館

「多摩美術大学図書館」(伊東豊雄、2007)までは、すぐ。電車+バスだと両方をまわるのは大変だ。バスのありがたみを実感する。
《理念》と《現実》の両義という側面は「東京カテドラル聖マリア大聖堂」を引き継ぎながら、さらにそれを細分化して、合間に家具やインテリアのデザイナー、周辺環境や私たちといった他者が参加する余地を加えている。そこに現代のコンクリートの質や免震技術も味方に付けて。
背景などは『つくる図書館をつくる―伊藤豊雄と多摩美術大学の実験』に分かりやすく記されています。

スーパーハウス理容室

予定通りのコースをまわって、バスは東京駅へ。途中、以前の記事で触れたスーパーハウス、を2つ連ねた理容室を見つけた。車窓から撮影。

やや欲張りすぎて駆け足になってしまったが、メールのやり取りした無かった方々ともお話できた。時代順にまとめて見られたので、個人的には嬉しかった。
こうした機会を与えてくれた日本コンクリート工学協会関東支部若手会21の方々、ご参加の皆様、ありがとうございました。
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