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建築雑誌2008年2月号表紙

最初に編集を担当した「建築雑誌」の2008年2月号がwebで読めるようになった。

下のページで各記事の右にある「本文: CiNii」をクリックするとPDFで開く。
http://ci.nii.ac.jp/vol_issue/nels/AN00079427/ISS0000420071_jp.html

念のために書くと、「建築雑誌」は明治20(1887)年から続く日本建築学会の機関誌。五十嵐太郎編集編集長になって2回目の特集を任され、モダニズム建築の「保存」をめぐる特集は120年の歴史の中に無かったので、それをやることにした。
タイトルにした「慈しまれる? モダニズム建築」という言葉は、揶揄しているようにも受け取られかねない。実際、少し誤解もされたが、揶揄する意図はなかった。ただ、リード文に書いたように、ついこの間まで「歴史」を壊した元凶のように言われていたものに対して「保存」が叫ばれるのは不思議なことでもある。だからこそ、立ち止まって思考する価値がある。それを伝えたかった。

当時最新の事例を採り上げることに決めて、8名の方に原稿をお願いした。現在進行形で密度のある、いずれも歴史性の高い文章を寄せていただいた。
例えば、南一誠さんは「東京・大阪中央郵便局庁舎の保存に関する取組み」を当時はっきりと論じている。山名善之さんには「重要文化財、世界遺産候補としての『国立西洋美術館本館』」の背景を詳述していただいた。
もし、これで今年の夏に「国立西洋美術館」の世界遺産登録が実現したら、さらに人々の関心が「モダニズム建築」に引き寄せられるはずで…なんて世の中の潮目も、副産物としては読めるかもしれない。

自分では巻頭の解説文と「『モダニズム建築の保存』の20年」の年表を書いた。
巻頭の文章「『モダニズム建築の保存』がもたらすもの」は特に緊張感を持ってまとめた。その内容を九州大学教授の土居義岳さんにblogで評していただき、嬉しかった。

「モダニズム建築」ってなんだ?その保存とは? - 土居義岳のリハビリ建築ブログ
http://patamax.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_9c66.html

「仮想敵(のふりして現実敵)」とは、その通りだ。しかも、続けて「モダニズム建築」という語について議論を展開されている。
「近代建築」や「モダニズム」の語法については、2000年に出た「10+1」第20号「特集・言説としての日本近代建築史」に「『日本近代建築』の生成―『現代建築』から『日本の近代建築』まで」という論を寄せた時に扱ったので、これも有り難い。
以来、「モダニズム建築」は「保存」と並び、自分の中でひっかかる用語だ。なので、今回の特集記事でも「モダニズム建築の保存」としたのだ。もちろん、それでは終わらない。だからといって、英語やフランス語で書けば済む話でもない。モラトリアムはまだ続きそうである。
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