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2005.12.17
命日・『吉阪隆正の迷宮』出版
日付が変わった。きょう12月17日は吉阪隆正さんの命日だ。
亡くなってから、ちょうど25年。人間の生命の一サイクルにあたる。
うちは建築とは無縁の家庭だった。
ただ1冊だけ、建築の本があった。
それが「建築文化」の1981年5月号で、「特集:吉阪隆正1917~1981」とある。
60ページの特集の中には、重村力さんによる総論、詳細な年表、
座談会(戸沼幸一さん、富田玲子さんら弟子の中に、
石山修武さんが入って、気炎を吐いている)、関係者14名のコメントが載る。
短い編集期間とは思えない充実した内容。
背景の熱気は、高らかな編集後記にも明らかだ。。
「この建築界で、たった一人の建築家の死が、これほどまでに重大な衝撃と
痛恨を与えたことがかつてあっただろうか。この偉大な吉阪隆正と言う
建築家の死は、単に係りのあった回りの者たちのみを悲しませただけ
なのでは決してありえない。〈中略〉そして私たちは問われ続けるはずだ。
『きみはYOSIZAKAを越えられるか』と。」
当時、この雑誌を開いたのか、記憶に無い。
でも、「建築」などというジャンルがあるとは思わなかった少年時代、
毛色の違う雑誌の存在を、異様に感じたことは覚えている。
一方、吉阪さん(U研)設計のアテネ・フランセは、異様に思わなかった。
教鞭を執っていた親に連れられて、よく遊んでいたからだ。
前面の壁はピンクや紫に塗られ、アルファベのレリーフが施されている。
薄暗い階段には、がっしりとした手すりがあって、
撫でるとしっかりとして、手に心地よかった。
幼い頃は、小さい世界である。世を知らないひよこのように、
世界にはこんなレリーフがある建築と、無い建築の二種類があると思っていた。
似た建物が他にないことに気づいたのは、ずっと後の話だ。
「建築文化」の特集号は、アテネ・フランセの校長から頂いたという。
さて、お知らせ。
『吉阪隆正の迷宮』(2004吉阪隆正展実行委員会編、TOTO出版)が、
今日あたりに本屋に並ぶ。昨年、建築博物館で開かれた展覧会の成果だ。
12月17日に行われた重村力さんの講演と
シンポジウム(伊東豊雄、五十嵐太郎、倉方俊輔、司会:内藤廣)、
倉方が会期中に担当した10回の夜話やインタビューの内容に
北田英治さん撮影の吉阪作品の写真や図表などを加えた、充実の344頁。
さまざまな方のご協力で、ようやく完成した。
量が膨大になって原稿整理や註釈作成に思いのほか時間を取られたけれど、
編集を担われた松井晴子さん、齊藤祐子さんは、それ以上に大変だったと思う。
展覧会からのこの1年が、新たなサイクルの火付け役になればと期待している。
気負わず、臆せず、それぞれに。
吉阪という松明は、もっと引き継いでいけるはずだもの。
亡くなってから、ちょうど25年。人間の生命の一サイクルにあたる。
うちは建築とは無縁の家庭だった。
ただ1冊だけ、建築の本があった。
それが「建築文化」の1981年5月号で、「特集:吉阪隆正1917~1981」とある。
60ページの特集の中には、重村力さんによる総論、詳細な年表、
座談会(戸沼幸一さん、富田玲子さんら弟子の中に、
石山修武さんが入って、気炎を吐いている)、関係者14名のコメントが載る。
短い編集期間とは思えない充実した内容。
背景の熱気は、高らかな編集後記にも明らかだ。。
「この建築界で、たった一人の建築家の死が、これほどまでに重大な衝撃と
痛恨を与えたことがかつてあっただろうか。この偉大な吉阪隆正と言う
建築家の死は、単に係りのあった回りの者たちのみを悲しませただけ
なのでは決してありえない。〈中略〉そして私たちは問われ続けるはずだ。
『きみはYOSIZAKAを越えられるか』と。」
当時、この雑誌を開いたのか、記憶に無い。
でも、「建築」などというジャンルがあるとは思わなかった少年時代、
毛色の違う雑誌の存在を、異様に感じたことは覚えている。
一方、吉阪さん(U研)設計のアテネ・フランセは、異様に思わなかった。
教鞭を執っていた親に連れられて、よく遊んでいたからだ。
前面の壁はピンクや紫に塗られ、アルファベのレリーフが施されている。
薄暗い階段には、がっしりとした手すりがあって、
撫でるとしっかりとして、手に心地よかった。
幼い頃は、小さい世界である。世を知らないひよこのように、
世界にはこんなレリーフがある建築と、無い建築の二種類があると思っていた。
似た建物が他にないことに気づいたのは、ずっと後の話だ。
「建築文化」の特集号は、アテネ・フランセの校長から頂いたという。
さて、お知らせ。
『吉阪隆正の迷宮』(2004吉阪隆正展実行委員会編、TOTO出版)が、
今日あたりに本屋に並ぶ。昨年、建築博物館で開かれた展覧会の成果だ。
12月17日に行われた重村力さんの講演と
シンポジウム(伊東豊雄、五十嵐太郎、倉方俊輔、司会:内藤廣)、
倉方が会期中に担当した10回の夜話やインタビューの内容に
北田英治さん撮影の吉阪作品の写真や図表などを加えた、充実の344頁。
さまざまな方のご協力で、ようやく完成した。
量が膨大になって原稿整理や註釈作成に思いのほか時間を取られたけれど、
編集を担われた松井晴子さん、齊藤祐子さんは、それ以上に大変だったと思う。
展覧会からのこの1年が、新たなサイクルの火付け役になればと期待している。
気負わず、臆せず、それぞれに。
吉阪という松明は、もっと引き継いでいけるはずだもの。
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