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2009.02.20
プレハブ・ハイブリッドと大江宏

ライターの渡部千春さん、大城譲司さん、磯達雄さん、編集者の宮沢洋さんと、目黒で豚カツを食べながら飲んでいたら、秋田の角館の話になった。
磯さん+宮沢さんによる「建築巡礼 ポストモダン編」(「日経アーキテクチュア」連載)。第2回の2008/10/27号では大江宏の角館伝承館(現・角館樺細工伝承館)を採り上げていたが、その取材に渡部さんも一緒に行ったという。
僕が角館に向かう途中では、近くの集落で茅葺き民家と戦後の住宅を合わせた、ちょうど1本の線を境にPhotoshopで合成したような建物を見つけましてね・・・と、以前の記事「民家ハイブリッド」に書いた出来事を久しぶりに思い出して、はたと気づいた。続きの話があったことに。

それがこれである。寄り道の遅れを取り戻すべく、車をスタートさせてすぐ、視界の片隅に何かがよぎった。Uターンして確認すると、今度はハイブリッドなプレハブ小屋があった。
簡単で安価な軽量鉄骨製ユニットハウスとして全国に普及した(株)ナガワの「スーパーハウス」。ここでは、本来の陸屋根が勾配屋根に改造されている。

近づけば、杉板を使ったていねいな仕事。換気口の納まりも味わい深く、ユニバーサルなものが、ローカルな存在に変容している。
成り立ちとしては、先の民家とは新旧の順番が逆だが、「木」の力を実感させられる。形式を超えた、融通無碍な接着力。
風土に養われたそれを、大江宏は「伝統」と呼んだ。形式ではないのである。「近代建築」という形式を超えるものとして、大江は「伝統」を再理解していった。
そうして生まれたのが1978年の「角館伝承館」である。これらをすべて秋田の道行きが教えてくれたのだった。

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