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2009.01.23
水面に面した久米設計本社ビル

JR京葉線の潮見駅を降りたのは初めてだ。
倉庫や印刷工場があるかと思えば、丹下健三・都市・建築研究所の手がけた小ぎれいな公団マンションがある。最初は、とりとめのない印象だった。
「以前の本社は西麻布にあったので、1993年にここに移った時には、なんでという声も多かったみたいですよ」と芝田義治さんが言う。それも分かる。
久米設計の建築設計部に務める芝田さんとは日本建築学会の「建築雑誌」編集委員会でご一緒していて、せっかくなので本社ビルを案内してもらうことになった。
「でも、僕はこの本社を見て入社を決めたんですけどね」。

芝田さんがそう言った理由が、本社を道路側から見ていた時にはピンと来ていなかったが、社内をひととおり案内していただき、運河側に出る頃には納得したのだった。
水面が正面のような建物だ。道路と反対側は運河で、そちら側に一面のガラス窓が開いている。この久米設計本社ビルの特徴は、天然の木が植えられた中央の吹き抜けなのだが、これが水面に面しているからこその設計なのだと合点がいく。

すべての部署が吹き抜けに通じていて、そこから一番近いところに社内打ち合わせのブースがある。BGMではなく、天然のホワイトノイズが全体を包み込んでいる。人の動きが見える。同じ空気を吸っていることが、五感を通じて分かるような空間だ。その空気はよどむことなく、川の流れにつながって思える。

芝田さんのデスクも見せてもらった。眼を机から少し上にやれば、そこは運河と青空である。
後ろにサポートしてくれる仲間の存在を肌で感じ、前には無限の拡がりがある。ここから健康な建築が当たり前に生まれなければおかしいような環境だ。
東京音楽大学100周年記念館など、芝田さんが関わった設計の背景が少し分かったような気分がした。
偶然にも芝田さんの隣で働いているのは、家族ぐるみで親しくしている弟の同級生。お子さんが生まれたばかりで、デスクトップではもちろん愛娘が笑っていた。
*「建築浴MAP」(googleマップ)で所在地を見る
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