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住宅特集200902表紙

「縦書き」第2号の「新建築 住宅特集」が届いた。
「新建築 住宅特集」は前号の2009年1月号から誌面を大幅刷新した。文字組も創刊以来の横書きから、縦書きへと変わった。
「環境が変われば、中身も変わる。文章はどこか叙情的な色彩を帯びて、ありありとした素材のような性格を強める」。そんなフレーズで、担当させていただいている今号の「住宅を読む」を執筆した。それくらい印象が変わって、面白いと思ったのだ。

2月号では、村野藤吾の設計で1941年に完成した「中林仁一郎邸」のレポートを掲載している。訪れるのは建築評論家の長谷川堯さんと、京都工芸繊維大学教授の石田潤一郎さん。これ以上ない組み合わせである。
長谷川さんが玄関の空間にル・コルビュジエのラ・ロッシュ邸を見通せば、石田さんは中林邸を村野の建築の試みの中に確実に位置づける。新たに撮りおろした写真も美しい。上野リチがインテリアに協力しており、その優美さにはっとさせられる。
思わず、「住宅特集」ではなく、「住宅建築」(建築資料研究社)を手に取ったのかと表紙を見返してしまった。それは大げさだが、しっとりとしたいい特集だった。

「縦書き」雑誌といえば、あとは「CONFORT」(建築資料研究社)。無理に探せば、西沢大良さんによる新連載がそれに近いか。
グラスのデザインと飲み物のおいしさをめぐる柔らかなエッセイ。4ページのうちの2ページが頁大の裁ち落とし写真という構成は、昨年までの「住宅特集」と明らかに違っている。

2008年には「TITLE」(文藝春秋)や「memo/男の部屋」(ワールドフォトプレス)が無くなった。専門誌ではないが、建築家の住宅をしばしば採り上げていた雑誌だ。
休刊は上半期の出来事だが、その後サブプライム問題の波が日本に押し寄せて、若い建築家の未来が明るいはずがない。

苦しい時代のサヴァイヴは、寄らば大樹の生き残りではなく、溺れないように必死になっている芽吹きのサヴァイヴも助けるものであってほしい。そう思う。
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