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Googleマップ「ストリートビュー」倉方俊輔

今日Googleマップに「ストリートビュー」の日本版が追加された(Impress Watchの関連記事)。試してみたら面白く、時の経つのを忘れてしまう。
想像したよりも、すごいのだ。機能としては名称の通り、これまでのような上からの目線ではなく、歩きながら街を眺めているような視角が手に入るわけだが、まず提供範囲が意外に広い。東京エリアであれば、東は八王子、北はさいたま市、西は千葉市、南は江ノ島あたりまでが現時点で対象になっている。都内であれば、車が入れる道のほぼすべてが網羅されている。広い都市圏の建物をくまなく散策する。そんなことが自宅でできてしまう。
建築を勉強する人、愛好する人にも、与える影響は大きいに違いない。視覚的なフィールドサーベイだけなら、これで済ませてしまいそうだ。街の中の建造物の建ち方は写真集などでも知るのが難しいのだが、これからは行かなくても見当がつく。
ただ、心配もある。例えば、お調子者が住宅作品の場所を載せてしまうとか…。建築愛好家のモラルがますます問われそうだ、自戒を込めて。

さて、調子に乗って、東京の村野藤吾の建築をストリートビューで網羅してみた(改修を含み、茶室を除く)。所在地などの情報は基本的に、倉方俊輔・斉藤理『東京建築ガイドマップ-明治大正昭和』(エクスナレッジ)に基づく。同書で写真掲載&解説を加えたものは[ガイド解説]と記した。
前篇は7件。後篇の11件は明日アップします。

■近三ビルヂング(森五商店東京支店、1931年)中央区日本橋室町4-1-21[ガイド解説01-04]

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[解説]
村野藤吾が建築家・渡辺節の事務所を独立して最初に手がけたオフィスビル。77年が経った今も現役だ。背景には当初の設計の良さだけでなく、その後のオーナーの増築や改修の心配りがある(関連記事2008/05/17)
ストリートビューで、この1つ西よりの写真にすると、ビルに工事用ネットがかかっている。2008年5月に行った外壁タイルの打診調査の様子だろう。傷みの早期発見が長寿の秘訣であることが、ストリートビューの撮影の時間差のおかげで分かる。

■日本橋高島屋(日本生命館、1952年改修)中央区日本橋2-4-1[ガイド解説01-19]

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[解説]
日本趣味も交えた様式主義の堂々たるファサードは知られているが、これはぜひ側面にもまわって見てほしい。そんな風に常々言っていても、皆がアクセスできる参考資料がなかなか無かった。建築写真はまず正面を重視するから。
しかし、建物の表面と裏面に優劣を付けないところがストリートビューの良いところ。ガラスの「モダニズム」と様式的ディテール、それに壁面彫刻を駆使して、キラキラした商業主義を良好に演出する村野の増築の手練れが、これで簡単に紹介できる。様式建築以来のファサード主義は、ストリートビューの登場でようやく乗り越えられるのかもしれない。

■日本橋高島屋新館(1975年)中央区日本橋2-11-1

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[解説]
あまり目立たないけれど、これも村野建築。逆T字形の窓は村野がよく使う意匠。水平に走る開口部と共に、ヴォリューム感をなんとか和らげようという工夫である。

■八重洲ダイビル(1968年)中央区京橋1-1-1[ガイド解説01-20]

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[解説]
超合金ロボを勝手に連想してしまったメタリックな形だが、屋上庭園のグリーンが最上部に少しのぞいている。1階外壁にプランターがあることに気づけば、上すぼまりの柱が樹木のようにも見えてくる。外壁のプランターやモザイクタイルの効果は、車道からのストリートビューでは分からないので、ぜひ実際に歩道を歩いて見てください。

■京橋三丁目ビル(1978年)中央区京橋3-1-3[ガイド解説01-24]

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[解説]
この地下入口キャノピーすごいでしょ。昆虫みたい。

■みずほコーポレート銀行本店(日本興業銀行本店、1974年)千代田区丸の内1-3-3[ガイド解説03-14]

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[解説]
大胆な形を実現させた銀行建築。これを知ってから高松伸の織陣第1期(1981年)を見ると、それも控えめな試みに思えてしまう。しかも、意表を突いただけのデザインに終わっていないのが村野で、せり出した部分に設備を収め、その下をポケットパークにして、人々との接点を作り出そうとした。
ストリートビューで南側に進んでいく(道路の「南」と書いてある矢印をクリックする)と、ファサードを分割してあたりを柔らかくしていたり、植栽を施している様子が分かる。そのまま真っ直ぐ進むと、右手に前川國男の東京海上日動ビルディング(東京海上ビルディング、1974年)が見えてくる。二つは同時期に建設工事を行っていた。

■ビックカメラ有楽町店本館(読売会館/有楽町そごう、1957年)千代田区有楽町1-11-1[ガイド解説03-27]

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[解説]
この角度から眺めると、線路との対応で外壁をカーブさせているのが分かる。軸を振った矩形の屋上工作物と相まって、1910-20年代のロシア構成主義を思わせる。そんな格好良さが今はある。
画面を左側にドラッグすると見えてくる東京国際フォーラム(ラファエル・ヴィニオリ、1997年)の場所に丹下健三の旧東京都庁舎(1957年)があって、同じ時期に工事を行っていたので、なおさら「村野 対 丹下」の構図で有楽町そごうが語られたわけだ。
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