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千ヶ滝の別荘 「千ヶ滝の別荘」©大西麻貴+百田有希

明日から27日までは「ぐるぐるつくる大学セミナーハウス」 ワークキャンプの第4回。
26~27日には大西麻貴さん、百田有希さんも参加することになって楽しみだ。

「学生ながら話題の2人だ。大西麻貴氏がメディアに初登場したのは『せんだいデザインリーグ2006卒業設計日本一決定戦』での3位入選。『図書×住宅』という題名通り、チューブ状の図書空間と住宅空間が交錯して、重なった場所が書斎や広場のスケールに変わる。…」

こんな書き出しで記事をまとめた『日経アーキテクチュア』2008年3月17日号(特別増刊号)の「今年の10人」の取材で、1月18日に初めて大西さんと百田さんと対面した。
共同設計した「千ヶ滝の別荘」でSD Review 2007鹿島賞を受賞。この時、SD賞を受けたのが僕と同期の芦澤竜一さんで、会ったときに「一回り年下が出てきちゃったね」と笑い合っていたものだ(4月16日の記事参照)。これは初めての実作として、監修の矢作昌生さん、構造設計の新谷眞人さん、鉄仕事のエキスパートである高橋工業などのサポートで実現に向けて動いている。その様子はご両人のblogを参照。
すでに二つ目の別荘の設計も始めている。今度は傾いた立方体をくりぬいたような構成で、「遺跡のイメージでつくろうと話し合っていた。そこにあっけらかんとした温室のような空間がある」(百田さん)といったもの。
伊東豊雄さんがディテクターを務めた「福岡市アイランドシティ・フォリー・ワークショップ2006」では、ほか3人の学生とのチームで公園内の遊具を設計。最優秀となった。今月に型枠が外れて、夏に竣工の予定だ。

前出の「今年の10人」の記事は、次のように結んだ。
「『千ヶ滝の別荘』では、SDレビューの『優しい』という審査評が意外だった。『つくる時には凶暴なつもりでいる』と大西氏は、はにかみながら語る。触感や嗅覚を研ぎ澄ませて内面からうがつような空間をつくろうとする2人。単純に社会や時代に対して開くのではない、第二の『内向の世代』の登場なのか。しばらくは言葉で説明できない感覚を大切にして突き進んでほしい。」

これは記事には書かなかったが、話を聞いて面白かったのは、どれも吉阪隆正さんの建築を連想させたこと。
「千ヶ滝の別荘」は「ヴェネツィアビエンナーレ日本館」(1956)である。(1)土地の勾配と一体化して成立している建築の機能、(2)完全に浮いているのではないピロティ、(3)点対称の平面、(4)中央に抜けた上下の開口、(5)構造的合理性を直截に反映した全体形、(6)幾何学形でありながら表現の肌合いに気を使った外壁面の扱い、(7)自然石を生かした地面の処理と、たちどころに共通性が列記できる。こんなに日本館と近しい建物を見たのは初めてだ。もちろん、形そのものは異なる。この最終形に至るプロセスもまったく違う。この近似は無意識的で、つまりは本質的なものなのだろう。
続く二つ目の別荘は、形そのものは異なるが、「浦邸」(1956)を連想させる。それは人間をほっておいてくれるから人間に優しい、幾何学の展開であって、単に曲線的なもの、奇抜なものが吉阪的だという誤解を越えたところで、類似している。
最後に「福岡市アイランドシティ」(ぐりんぐりん)内に建つフォーリー案を見た時は、今度はそう来たか、と。「平らな人工島の敷地を切り取って持ち上げて、新しい地形をつくろうと考えた」(百田さん)。それで上から見た時に円形で、正方形の穴がランダムにうがたれていると来たら、これはもう、あの衝撃的なU研究室の「箱根国際観光ホテルコンペ案」(1970)である。

いくぶん牽強付会もあるかもしれない。しかし、見てもいないのにこれだけ似てしまうということは、そこに何らかの必然が存在するのではないか?
26日は2人が敬愛する平田晃久さんも来る。吉阪らしさを新たに継承する手がかりが発見できるのかもしれない。
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