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気楽にブログを書いていきたいと思う。
「お手軽に仕上がる日記=覚え書き」というくらいの認識。
そんなんで大海に漕ぎだして、本当にだいじょうぶ?

ありし日の晴海高層アパート
   ありし日の晴海高層アパート(新建築社ArchitectureGuideより)

早稲田大学エクステンションセンター八丁堀校の講座で《集合住宅歴史館》を訪れた。
都市機構(独立行政法人 都市再生機構)の都市住宅技術研究所の一施設。
次の集合住宅(の部屋)が移築されている。
 (1) 代官山アパート 独身住戸・世帯住戸(設計:同潤会設計部、竣工:1927年)
 (2) 多摩平団地 (日本住宅公団、1958年)
 (3) 蓮根団地 (日本住宅公団、1957年)
 (4) 晴海高層アパート (日本住宅公団+前川國男、1958年)
都市機構の出発点は、1955年に設立された日本住宅公団で、さらに祖先をたどれば、1924年設立の同潤会に行きつく。それぞれ戦前と戦後の公的な住宅供給をリードした組織だ。

その最初期の鉄筋コンクリート造集合住宅(1)、
戦後の低層(2)、中層(3)、高層(4)のサンプルが保存されている。
研究所の中なので堅苦しいのでは?、素人には分からないのでは? ― そんな心配は無用。
説明員の方が分かりやすく解説してくれるし、展示説明も充実している。
なにより、物と空間そのものが語りかけてくれるので、ある種、ストンと腑に落ちる。
いろいろ考えさせられる「大人の社会科見学」。

晴海アパート案内板
   迷わないように取り付けられていた案内板

個人的には今回が3度目の訪問となる。
代官山アパート ― 狭いながらの工夫と暖かいディテール、
多摩平団地 ― テラスハウス形式の魅力、
蓮根団地 ― 典型的2DKが持つプロトタイプとしての完成度、
それぞれに再発見があった。
しかし、何といっても心打たれるのは、晴海高層アパートだ。

公団として初の高層住宅に、前川國男事務所のアイデアが盛り込まれている。
3階ごとにしか止まらないエレベーター。上下の階には専用階段でアクセスするという仕組み。
外部廊下が無いおかげで、両面採光が可能になっている。
板の間と畳のスペースに二分されていて、長ーい板の間は、台所と食事室。
コンクリートブロックも、配管もむき出しだ。
通常の寸法と違う長細い畳のせいもあって、日本家屋の寸法感覚とは離れている。
広いバルコニーには、玄関から土足のまま行ける。
生活の一部としてどう使いこなすか、想像をかき立てる。
他の公団住宅にも感心するのだけれど、晴海高層アパートはまた何かが違う。
生活を追求しながらも、どうしても隠し切れない「建築家」ゆえの格好良さ。
部分のデザインや、部屋の構成だけによるのではないだろう。
典型的2DKのほうが、生活にフィットしそうだ。「便利」な住み方を、空間が教えてくれそう。
比べると、晴海高層アパートは、万人向けに作り込まれてはいない
(設計者の意図がどこにあったかは別として、結果的に)。
いつまでもなじまない部分が、住み方を触発する。
「便利」という柔らかな制約ではなくて、未完の可能性が感じられる。
公団の2DKよりも、いま建築家が求められるものに近い。
晴海高層アパートは「デザイナーズ・マンション」の先がけである。
こんなことを言うと、前川國男さん(今のイメージの)に怒られるかもしれないけど…。

晴海アパート内部

この晴海アパートの跡地には、晴海アイランド・トリトンスクエアが建っている。
団地「再生」という美名で、取り壊されてしまった。
都市機構がその技術的主体を担ったわけで、複雑な気持ちになる。
と、ひとまず「薄味」のシメを・・・。

見学について
 「都市住宅技術研究所」では、集合住宅歴史館を含めて5施設が公開されている。
 ユニバーサルデザインや居住性性能、省エネルギーやリサイクルなどを扱った他の施設も、見どころ充分。
 公開日:火、水、木及び第2・第4金曜日
 公開時間:午後1時30分~4時30分
 申込み方法:事前に電話(0426-44-3751)かHP(http://www.ur-net.go.jp/rd)より申込み
 年に一度の特別公開日には、ふだん公開していない施設に入ることもできる。
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