| Home |
2007.11.04
早稲田大学文学部校舎の妙技

エクステンションセンターの講座で、早稲田大学文学部校舎を見学。
村野藤吾の設計で1962年に完成した。母校に残した唯一の建築も「耐震性に問題あり」とのことで、低層棟以外は消え去ってしまう(早大戸山キャンパス工事情報)。
11月から取り壊しとのことだったけれど、高層棟・中層棟はまだ建っていた。
スラッとしたプロポーションは、戸山一丁目あたりの建て込んだ町並みからふと見えた時にも美しい。
象徴的だけど、威圧的で無い。そんな感じだ。

中庭を囲んでいる建物のうち、左手の32号館はもとから建っていた校舎。
スロープで上るにつれて低層棟と高層棟の眺めがダイナミックに変化する様子は、敷地の傾斜のなせる技。
端部が細くなったラーメン構造の躯体を露にした見た目は、ローコストの要請。
でも、それらすべて建築家が手がけたデザインのように見えてくる。
長谷川路可のモザイクも見事にはまっている。
空間、光、テクスチャーを細分化して、スケールを合わせているからだろう。

「99パーセントは施主に従う」とは村野藤吾の有名なポリシー。
翌年完成した日生劇場のほうが数十倍有名で、確かに重要文化財クラスの逸品だけど、与えられたものを呑み込んでしまう村野藤吾の妙技を実感するには、文学部校舎のほうである。
たぶん、明日もまだあると思う。

| Home |