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谷村美術館01

2009年1月末で閉館していたので今さらかもしれないが、早稲田大学建築史研究室(中川研究室)修士2年の安友千絵さんが教えてくれるまで知らなかった。新潟県糸魚川市の「谷村美術館」は赤字が看過できなくなったので、玉翠園・ 翡翠園と共に閉館し、維持管理は続けながら新たな方策を探すという。

「谷村美術館」は1983年の完成。建築家・村野藤吾が竣工に立ち会った最後の作品、いわば遺作である。うねった内壁の写真は、昨年の『村野藤吾 建築とインテリア』展(現・パナソニック汐留ミュージアム)のポスターに使われていたから、目にした方も多いだろう(過去の関連記事)。
同館は彫刻家・澤田政廣氏の作品を展示する個人美術館として、谷村建設の前社長である谷村繁雄氏によってつくられた。工事中の写真が現地にあった。これが実に迫力がある。断って撮影させていただいた。

谷村美術館03
現場で指示を出す村野氏、当時92歳

谷村美術館04
建物と大地のつなぎ目をチェックする村野氏

谷村美術館05
模型をはさんで談笑する澤田政廣氏と村野氏。澤田氏は1894年生まれなので、2人合わせて181歳! 芸術家って…。

内部は木彫を静かに観賞する場なので、写真は撮っていない。撮れない。
空間や様式的細部を形として見せるのではなく、空間の肌理や光といった「質」の抽象度を高めていった内部である。しかも、具体的な仏像一つ一つに応じてもいる。当然これは、現代の建築に通じるようなものだ。例えば、昨日の記事にしたライザー+ウメモトの『アトラス―新しい建築の見取り図』だと、pp.76-81の「内的と外的」の部分にあたるだろう。『村野藤吾 建築とインテリア』展の図録に僕が寄せた論で言うと、「数えられるもの」が後者である。

谷村美術館02

内部に入れないとしたら図録や本で想像する他ないのだが、しかし、これは「写真に撮れない」性質をますます高めていった晩年の村野の作品である。なるべく早い時期に、良い形で折り合いが付いて、再び扉が開かれると良いのだが。
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